ことばの羽根 ~あるSTの物語~16
前回のお話はこちら
そんなわけで臨床実習に関して
精神的にいっぱいいっぱいで
あまりくわしいことは覚えておらず
申し訳ないことに
担当させていただいた患者さまに関しても
あまり詳しくは思い出せないのだが
この患者さまとのやりとりでひとつ
印象的なエピソードがあるので
今回はそれについて書きたいと思う
印象的なエピソード、というか
私の失敗談、といった方が正しい
あるとき
その患者さんが私にたずねた
「なおりますか?」
「それは○○さんの頑張り次第ですよ」
と私は答えた
言った後、私は後悔の念に苛まれた
私は言ってはいけないことを言ってしまった
患者さんたちは頑張っている
頑張っているけれども
なかなかよくならなくて
勇気を出して聞いてくれたのだ
それなのに私は
その患者さんの頑張りが足らないかのような
言い方をしてしまった
そして、いくら頑張っても
なおらないものもある
それがこのリハビリの世界だ
もちろん
少しでも機能が回復するようにと
患者さんもご家族もスタッフも
力を合わせて取り組む
しかしそうは言っても
100%完全に元の状態に戻ることは
難しい場合がほとんどだ
だからなおるのかと聞かれれば
「なおらない」が正解なのかもしれないが
その返答は適切ではない
今の私ならこう答える
「完全に元通りというわけには
いかないかもしれません
しかし少しでも元の状態に近付けるように
一緒に頑張っていきましょう」
現時点で個人的には
「頑張る」ということばは好きではないし
相手によってことばは選ぶが
まぁこんなところだろう
ちなみに「元の状態へ近付けること」だけが
リハビリではない
今の状態で生活するための工夫をすることも
リハビリの仕事だったりする
ここらへんは患者さまの発症からの日数や
症状の重さ、家族の協力度合いなど
いろんなものによって左右される
話はそれてしまったが
私はこのときの反省を心に留め
患者さんと向き合っていくことにした
続く。
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