ことばの羽根 ~あるSTの物語~46

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この患者さんは糖尿病も患っていた

そのため食事前の血糖測定やインスリン注射も
行っていたと思うが
あるとき糖尿病の数値が思わしくなかったのか
近くの他の大きな病院へ転院する話が
持ちあがった

私の職場の病院でも主治医は
糖尿病に詳しい医師だったので
どういうことだったのか
よくわからないがその主治医の女医さんが
他の病院へ転院させようとしていた

その女医の先生は
その患者さんとの折り合いが悪そうな印象を
当時私は持っていた
「だから転院させようとしているのでは?」
という気持ちがなかったこともない
まぁ普通に考えたらそうではないとは
思うが。

でもそれ以上に私には気がかりなことがあった

その転院先の病院にも言語聴覚士はいたが
そこでこの患者さんに適切なリハビリを
行ってもらえるとは思えなかったのだ

失語症のリハビリというと
絵カードを並べる場合が多い
使い方には色々あるがいずれにしても
絵カードを使うことはこの患者さんにとって
あまり良いことだとは思えなかった

絵カード=視覚手段である

この患者さんは聴覚手段の方を鍛えないといけない

視覚手段があるとどうしてもそれに
頼ってしまうのだ
だから一切の視覚手段を排除して
聴き取りの強化を図ってきた

しかし転院先で
このあたりを考慮してもらえるとは
残念ながら思えなかったのだ

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