ことばの羽根 ~あるSTの物語~43

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50代ウェルニッケ失語男性・・・

幸い、失語症以外の症状は軽く
独歩も可能であった

もともと営業職をされていたようで
コミュニケーション意欲や態度も良好
人当たりの良い人であった

ウェルニッケ失語の方は自分の状況を
十分に理解されず手こずるケースが多いが
この患者さんはそうではなかった

最初こそ混乱されていたが
徐々に現状を理解し冷静に
リハビリに向き合ってくださっていた

この上なくリハビリしやすかった

さて前回「誤って聴こえる」と書いた

失語症の「聴いて理解できない」にも色々ある

ブローカ失語の場合
正しく聴けているけれどもそれが何か
その意味がわからないといった状態

しかしウェルニッケ失語の場合は
正しく聴けていないのだ

奇跡的に我が家に残っていた記録を
引っ張り出してきた

開始当初この患者さんは
「いちご」を「いかりよ」と聞き取り
「いーよ」を「しんけんにしようよ」と
聞き取っている

私が「いちご」などと言い
それを聞こえたように言ってもらったところ
このように返答された、というわけだ

文字数まで増えてしまっていることが
衝撃的ではなかろうか

 

続く

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