ことばの羽根 ~あるSTの物語~31
前回のお話はこちら
【40代男性・Aさん/失語症】続き
積極的にリハビリに取り組んでいただけたこと
年齢的にお若いことなどから
Aさんはめきめき良くなっていった
とはいえ言語障害というのは
回復に随分と時間がかかる
Aさんの大きなため息はしばらく続いたが
次第にため息をつくことはなくなっていった
もともと明るい陽気な方だったのだろう
大きな声で楽しそうに歌を歌いながら
廊下を歩いてみえたことが何度かあった
「鳥よ~鳥よ~鳥たちよ~」
杉田かおるさんの「鳥の詩」
ちなみに多くの失語症の損傷部位は
大脳の左半球だ
(左利きの方の場合など例外はある)
そして歌を歌うのは右半球の機能によるものだ
右半球は損傷されていないので
失語症のためうまく話せない人でも
歌は問題なく歌えることはよくある
(そうでないこともあるが)
というわけで歌を歌うことは
失語症のリハビリとしてすごく有効とは言えない
しかし歌うことで楽しい気持ちになれるのなら
それは大きな意味があると思っている
それに、少なくとも呼吸発声の練習にはなる
私も歌うことは大好きなので
必要に応じて患者さんと一緒に
歌を歌うようにしている
そういえばAさんと一緒に
「鳥の詩」は歌わなかったな・・・
Aさんはひとりで歌っていてくれたから笑
続く。