ことばの羽根 ~あるSTの物語~47

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そんなわけで私は
その患者さんが転院してほしくない
と思っていた

せっかくなら適切なリハビリを受けてほしい

実は少々厄介なことに
失語症のリハビリ方法にも色々あって
派閥に近いものも存在する
今はわからないが少なくとも当時は
そんな風潮が少なからずあった

そのため、患者さんが転院するなら
経過や現在の状態、リハビリメニューなど
詳細なサマリーを作成し
転院先の言語聴覚士に送ればいいのだが
残念ながらそんなに簡単な話でもなかったのだ

もちろん仕方ないと割り切ればいいのだが
当時の私にはそれができなかった

そのため私は主治医のもとへ行き
転院しないで済むようにお願いをした

私としてはお願いをしたつもりだったのだが
主治医の女医さんからしたら
そうは見えなかったようだ

生意気な言語聴覚士の小娘が
私に歯向かってきた
くらいなかんじに受け止められたのだろう

今から考えるとよく主治医に意見したな
とも思うし
もう少しうまく立ち回るべきだった
とも思う

まぁ若かったのだ

私としては一所懸命なだけだったのだが
少々問題児にうつってしまったらしい

まぁこんなことは病院ではよくあることだろうけど

結局、なぜだがわからないが
その患者さんは転院することなく
入院し続けた

私の意見を聞いてもらえたとは
思えなかったが・・・
一体なんでだったのだろう・・・

続く

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