ことばの羽根 ~あるSTの物語~30
前回のお話はこちら
患者さんはいろんな人がいた
思い出して書いていきたいと思う
(もちろん個人情報にかかわらない範囲で)
【40代男性・Aさん/失語症】
患者さんは70代80代の方がほとんどだったが
時々若い方もみえた
Aさんは40代半ばくらいだっただろうか
背の高いイケメンだった
(たしか)脳梗塞により失語症になり
リハビリのため私の働いている病院へ
転院してみえた
失語症と一言で言っても
それぞれ症状は様々なのだが
Aさんの場合
簡単な日常会話レベルの理解はできるものの
言いたいことがなかなかことばにならない
といった状態だった
働き盛りのご年齢
思い通りにならないことで
かなりイライラを募らせてみえた
当然のことだ
入院当初はよく大きなため息をついてみえた
幸い歩行は可能であったため一緒に歩いて
病室から言語室へ向かっていたのだが
その時も大きなため息をついていて
私はいつか殴られるんじゃないかと
内心ひやひやしていたのを覚えている
大きなため息をついているんだから
リハビリ拒否かなと思っていたが
予想に反して
検査課題も訓練課題も
非常に積極的に取り組んでいただけた
続く。